2016年12月27日火曜日

Happy Holidays 2016

ゆっくり色付いた紅葉が散って
いつの間にか冬景色


色々用事を片付けながら気が付けば
もうすぐ1年が終わりそう

時間が過ぎてゆくスピードが
年々早く感じるようになって

一体どうしたら
日々の感じたことや大切にしたいことを
きちんと心に留めて置けるのか
ちょっと考えてみる


5年目にして初めて実をつけた
鉢植えの小さな檸檬とオリーブを
子供が描いた絵と一緒に写真におさめておくとか


クリスマスケーキやリースを
素朴な飾り付けでもいいから
自分たちの手で作ってみるとか


少し手間がかかっても
信頼出来る生産者さんに
新鮮で安心な野菜を届けて貰うとか


海外にいる友人と
メールやSNSでつながっているとしても
クリスマスカードやプレゼントを贈り合うとか


何ていうか
いくらでも省略できる諸々を、あえてする作業

時間に追われて忘れてしまいそうなものたちを
一つずつ 丁寧に包んで保存するような感じで
あたたかな気持ちと共に また開く日を楽しみにするような気持ちで

いま 目の前の瞬間を大切にすることは
何よりの喜びをもたらすと信じて


今年一年 出逢えたすべての出来事と
素敵な人たちに感謝して

HAPPY HOLIDAYS

来年も皆さまの笑顔に
お会いできることを楽しみに
どうぞよいお年をお迎えください



2016年12月14日水曜日

みなとの街の森づくり

冬の入り口の日曜日。
朝の光を浴びながら、みなとの森公園へ。


「震災復興記念公園」の名がつくここには、スポーツを楽しむ人たちや芝生広場でくつろぐ人たち。小さな子向けの遊具はないけれど、思い思いのペースで過ごせる場所。



造形作家のマスダマキコさんが、こちらで「森づくり」の活動をされていると知ったのは数年前。震災後、皆でどんぐりから苗を育て植樹した木々の手入れを、今も毎月されていると。


木を剪定するという作業は、都市部の真ん中では滅多に出来ない経験。
手入れをするという作業は、その場限りでは終わらない根気のいる仕事。


毎月欠かさず参加することは難しくても、たとえほんの少しでも、何かの役に立つことが出来たなら。そう思い、都合がつく時はご一緒させていただくことに。
ただ私に至っては、自然と触れ合う機会を少しでも持ちたい…というのが本心かも。


灰色の高層ビルと工業用地を抜け、公園へたどり着く。
少し遅れたこともあり、ベース基地には誰もおらず、ぐるりと廻って手入れ隊を探す。
紅葉を楽しみながら、トラックを一周したくらいに合流。

「いま、どの木の どの部分を剪定したらよいのか、説明を聞いているんですよ。」


白い実と雫型の葉が可愛いナンキンハゼは、繁殖力が強く放っておいたらその木ばかりになってしまう…とか
常緑樹は、落葉樹の下にあっても育つけれどもその逆は難しい…とか
夏の木陰をつくるために、ここはこのまま残しておこう…とか


なるほど、そうなんですね、と頷きながら…
お手伝いに来たつもりが、勉強会のようになっている。

当たり前だけれど、むやみやたらに何でも切ることは出来ない。たくさんの人の想いと共に 年月を経て大きくなった木々たち。


風で飛ばされてきたであろうビニール傘、スナック菓子の袋、ナイロン袋のかけらを拾いながら歩く。

「じゃあ、ここを少し手入れしましょう」


小さな枝葉は、木の根もとに置いて堆肥に。
大きな枝は、炊き出し訓練用の焚き木に。


腰に「手のこ」と剪定ばさみを装着し、気分だけは一人前で。12月の澄んだ空気の中、背中に陽射しを感じながら皆で作業する。


「ここには、震災(阪神淡路大震災)で亡くなられた方々と同じ数の苗木を植えたんですよ」


にこにこと穏やかに話すその方の、その言葉を聞いた瞬間、あぁ 今日 ここに来てよかったと思った。

作業を終え 今年この森で収穫された梅のシロップをいただく。雑談しながら立ち飲みで、皆で一緒に外のテーブルを囲んで。

これから大きくなる子供たちと
今から社会に出ようとする学生たちと
この場所に苗を植え ずっと手入れをしてきた方たちと。


この時季のこの街はいつも、復興を祈るイルミネーションで華やかに彩られている。
でもここ数年は、溢れる人の波に呑まれてしまいそうで 私は足が遠のいている。

そのステージからほんの少し離れただけの この小さな森にいると「ほんとうに大切なもの」を考えずにいられない。

海から吹く風に葉が揺れる。静かに流れる確かな時間と、この地にしっかりと根を張る木々たちの 美しい息吹が聴こえてくるような気がした。


大切なものは きっと
大切にするからこそ続いてゆく

みなとの街の森づくり
もしお時間があれば
ご一緒に、いかがですか





2016年11月21日月曜日

逢いたい人たち 其の4 ツギキ×森果樹園

神戸のファーマーズマーケットEat Local Kobe が本格的に始まって約半年。
夏に初めて訪れてから、今は私たちの生活の一部となってそこにある。
少しずつ増える人びとや、巡りゆく季節とともに。


この場所へ出来うる限り足を運ぶのは 自分も「この風景の一部になりたい」と願うから。
関わる人たちと そこに集う人たちが、その場の空気をつくる。それぞれのもう一つの居場所。


アーバン(都市部)とカントリー(農村部)の両方の魅力を伝えるここは、緑の下で人と出逢い 言葉や笑顔を交わし 大切な何かを感じ取るところ。

これからは既存の流通システムに頼らない「顔の見える関係」が何より重要になってくるのだと思う。モノや土地の向こうに、携わる人たちの営みや生活が見えるということ。お互いに支え合い 心でつながる関係を築くために。

生きてゆくための「ライフライン」は、本当は水道や電気などのことではなくて
人と自然、人と人とのつながりを指すのかもしれない。


*******

日に日に秋の深まる休日。
マーケットでつながった淡路島の「森果樹園」さんに 温州みかんの収穫のお手伝いへ。


パチン、パチンと剪定ばさみで枝からミカンを狩り取ってゆく。
「みかんの、いいにおい!」
口々に子供たちが言う。


フレッシュでグリーンな、ほろ苦く匂い立つプチグレンの香り。
それが柑橘系の枝葉から採れる精油の名前だということを、その主要な成分や効能を、例えば私は知っている。


ただそれは専門的には必要な知識だとしても、本質的にはあまり重要なことではなくて
きっと何より大切なのは、生きているミカンの枝を切り取る際に手についた樹液のべとつく感覚や、もいで直ぐ口にした甘酸っぱい味わいや、ふわりと漂い残った「記憶の中の香り」。

いつかこの子たちが大きくなった時に
自分たちがもっと歳を重ねた時に
今日の日の出来事を、香りとともに懐かしく思い出すことがあればいいなと思う。


収穫も、選別も、すべて手作業。
お手伝いで参加した皆んなで、一緒に。


「うちは、観光農園ではないですから」
控えめに話す森さんの傍らには、90歳を少し超えるお爺さまと、地元の農家の方。


山の中腹にひっそりある小屋を覗く。
収穫した果物を保管する場所。
薄闇のなか、たくさんの棚を見上げる。
着物をしまう立派な桐の箪笥みたい。


少し眠って、じっくり ゆっくり 美味しくなぁれ。

作業を終えひと息ついて、他の木々たちを眺める。
「この実は何ですか?もしかして…」
「いい質問ですね。鳴門オレンジです」
やっぱり!


地場産の美味しいジュースやスティックの原料になっている鳴門オレンジ。
育てる農家さんは淡路島に数えるほどしかいないということを、どれだけの人が知っているのだろう。
この幻の果物が熟す季節に再訪することを愉しみに、いまはまだ若い香りを そっと記憶に刻み込む。


「原型に触れる」体験は「自然なカタチを知る」ということ。それはとても豊かな、生きている喜びを実感できる時間。

「ほんとうの意味での豊かな暮らし」は
生を産み出す人と、生を活かす人が、より深く関わることによって実現されてゆくものなのかもしれない。

だとしたら その「関わり」を創り出す人に私はなりたい。双方を往き来することにより お互いの可能性を引き出せる人になりたいと、心から思う。


〒656-1313 兵庫県洲本市五色町鮎原西368



2016年11月16日水曜日

サードタイム、サードプレイス

何のために、と訊かれれば
時間のために、と答えると思う

誰のために、と訊かれれば
その時間を求めるすべての方のために、ときっと答える

特定の場所を持たずにいる私だけど
誰かにとっての「第三の時間」を創り出したくて
色々な場を借りて活動をしているのかもしれない

ある時そう気がついたら
往き来する自分にも
生み出せる何かがあるような

二度とない いまだけの大切な時間を
記憶に刻む方法が見つけられるような
そんな気がして

いつでも、どこでも、誰とでもつながれるからこそ
いま、目の前にいる、その人と一緒にいる時間を大切にしたい

BOTANICAL MOMENT

始めます




2016年10月4日火曜日

ルーティンワークとライフワーク

「対極のイメージがする言葉」というのがあって
それは辞書で調べて出てくる「対義語」とは違う。

【ルーティンワーク】と【ライフワーク】は
まったく逆のイメージを与える言葉だと思う。
この二つは同じようなことを指しているみたいで、根っこの部分でまるで違う。

【ルーティンワーク】は義務的な、やるべきことを仕方なくやっているような、やらされている感じ。あれこれ考えなくても出来る、無意識で受動的な世界。

【ライフワーク】は、やりたいことを自ら選び、その為にやるべきことをすすんでやっている響き。行きたい方向へ意識して取り組む、能動的な世界。

心底疲れているときは、色々なことが「ルーティン」になって辛いなぁと思う。
でも少しづつ体調や気分が上向きになってきたとき、素敵な出逢いがあったとき、大切な人たちとかけがえのない時間が過ごせたとき…「日々やるべきこと」は「ライフワーク」になり、それらをよりよいものにしようと前向きに積極的に向き合うことができる。

ただの言葉、かもしれないけれど。
言葉ひとつで気分が切り替わり、隣りにいる人と 自分の人生や環境と 前向きに関わることができる。「生きていく姿勢」に直接つながっていくような気がする。

誰かとコミュニケーションをとるとき、自分と対話するときには
日々生きること、働くことが喜びとなるような
そんな言葉を遣いたい、と思うのです。




2016年9月26日月曜日

瀬戸内の、雨と海と芸術祭と

以前から楽しみにしていた「瀬戸内国際芸術祭」。
初開催の時には偶然、小豆島を旅行していたことを思い出す。


台風が近づいていたため、天気予報とにらめっこしながら3年に一度の「瀬戸芸」へ。


高松港から赤と白の「めおん号」に乗船。
小さな船に心地よく揺られていると
あっという間に伝説の島に到着。


 「あっ」


こんな風に、自然と一体化したアートが好き。
風景に無理なく溶け込む 癒しのアート。
「かもめの駐車場」に本物のカモメさんたちはおらず、遠慮がちに別の場所で羽休めをしているのが見えた。


「モダン・アートはよくわからない」との意見に
その通りだと思うものも確かにあるのだけど
五感を刺激され、心底面白いと思えるものもたくさんある。


作品なのか、それとも以前からあったものなのか。
生活に溶け込む現代アートは「鑑賞するもの」から「体感するもの」に確実に変わりつつある。


「おおきい黒船!でも、帆が上がっていないね。」

そう私が感想をもらすと、手をつないでいた5歳の娘が

「うん、ピアノだね。」

とにこにこしている。

…ピアノ?

よく見ると、確かにピアノでもある。
気が付かなかった。椅子まであるのに。
思い込みでそれにしか見えなくなることを、子供のやわらかな感性に教えてもらう。





古くからある神社、自生する植物。
廃墟になった民家や小学校。
時折降る雨に空を見上げながら、小さな島をゆっくり歩いて見て回る。


すれ違った地元の方に「こんにちは」と小さく挨拶すると、ゆっくり「いらっしゃい」と言葉が返ってきた。 何だか嬉しい。

誰かがつくったツリーハウスを過ぎて、宿泊先のビーチハウスへ。


スタッフは、管理人の方がひとりだけ。
窓からの緑と小さな電球が灯るロビー。


新しいスタイルの「アパート」は
清潔で、余計なものがなく、心地よい時間が流れている。




夕方、広々としたキッチンに家族全員で立ち生地をつくり
お庭にあるピザ釜でピザを焼き、ワインとジュースで乾杯する。


自分たちでお布団をひいて眠り、潮の音を聴きながら目を覚ます。
「生きている実感」が確かにする、ほんとうの贅沢な時間を味わう場所。


次の日は港からバスに乗り、鬼の住んでいたという洞窟へ。




鍾乳洞(しょうにゅうどう)のように、ひんやりと湿った空気。
思いのほか中は広く ガイドなしでは迷子になりそう。
暗闇を手探りで、恐る恐る前に進む。


 いつも思うのだけど、アートと香りはとてもよく似ている。「見えないもの」を表現しようとする世界。音楽もそう。

普段目に見えるものは嫌でも意識してしまうものだけど、視覚優位の世界からいったん自分を切り離して解放すると、隠れていた世界がすぐそこに広がっているのを肌で感じることができる。



「わかっている」つもりになっている現実が
実はわからないことだらけなのだ、と気付かせてくれるのがアートだったり、音楽だったり、香りだったりする。

それらが人工的に作られているものではなく
自然が創り出したものであれば尚更に。


私はといえば
取り入れるときは左脳的なのに、表現するときは右脳的。
あれこれ考える際は論理的で理屈っぽくなってしまうのに、実行に移す際はアバウトに直感を頼りにしてしまう。

でも、そのくらいがちょうどいいような気もしてきた。図らずも今こうして、art and science - 芸術的/科学的側面を併せ持つ「香りの世界」に身を置いているのだから。


「鬼って、ほんとうにいたのかもしれない。」
口々にそう言って洞窟を後にする。
観光に来たというよりむしろ、物語の中に迷い込んだ感覚。

きっとこの島の神聖な何かと、住む人たちの自然を受け容れる生活を垣間見て、皆がそんな風に感じたのだと思う。


霧立ち籠める伝説の島
ぜひ、どうぞ

秋季開催日程:10月8日−11月6日