朝の光を浴びながら、みなとの森公園へ。
「震災復興記念公園」の名がつくここには、スポーツを楽しむ人たちや芝生広場でくつろぐ人たち。小さな子向けの遊具はないけれど、思い思いのペースで過ごせる場所。
造形作家のマスダマキコさんが、こちらで「森づくり」の活動をされていると知ったのは数年前。震災後、皆でどんぐりから苗を育て植樹した木々の手入れを、今も毎月されていると。
木を剪定するという作業は、都市部の真ん中では滅多に出来ない経験。
手入れをするという作業は、その場限りでは終わらない根気のいる仕事。
毎月欠かさず参加することは難しくても、たとえほんの少しでも、何かの役に立つことが出来たなら。そう思い、都合がつく時はご一緒させていただくことに。
ただ私に至っては、自然と触れ合う機会を少しでも持ちたい…というのが本心かも。
灰色の高層ビルと工業用地を抜け、公園へたどり着く。
少し遅れたこともあり、ベース基地には誰もおらず、ぐるりと廻って手入れ隊を探す。
紅葉を楽しみながら、トラックを一周したくらいに合流。
「いま、どの木の どの部分を剪定したらよいのか、説明を聞いているんですよ。」
白い実と雫型の葉が可愛いナンキンハゼは、繁殖力が強く放っておいたらその木ばかりになってしまう…とか
常緑樹は、落葉樹の下にあっても育つけれどもその逆は難しい…とか
夏の木陰をつくるために、ここはこのまま残しておこう…とか
なるほど、そうなんですね、と頷きながら…
お手伝いに来たつもりが、勉強会のようになっている。
当たり前だけれど、むやみやたらに何でも切ることは出来ない。たくさんの人の想いと共に 年月を経て大きくなった木々たち。
風で飛ばされてきたであろうビニール傘、スナック菓子の袋、ナイロン袋のかけらを拾いながら歩く。
「じゃあ、ここを少し手入れしましょう」
小さな枝葉は、木の根もとに置いて堆肥に。
大きな枝は、炊き出し訓練用の焚き木に。
腰に「手のこ」と剪定ばさみを装着し、気分だけは一人前で。12月の澄んだ空気の中、背中に陽射しを感じながら皆で作業する。
「ここには、震災(阪神淡路大震災)で亡くなられた方々と同じ数の苗木を植えたんですよ」
にこにこと穏やかに話すその方の、その言葉を聞いた瞬間、あぁ 今日 ここに来てよかったと思った。
作業を終え 今年この森で収穫された梅のシロップをいただく。雑談しながら立ち飲みで、皆で一緒に外のテーブルを囲んで。
これから大きくなる子供たちと
今から社会に出ようとする学生たちと
この場所に苗を植え ずっと手入れをしてきた方たちと。
この時季のこの街はいつも、復興を祈るイルミネーションで華やかに彩られている。
でもここ数年は、溢れる人の波に呑まれてしまいそうで 私は足が遠のいている。
そのステージからほんの少し離れただけの この小さな森にいると「ほんとうに大切なもの」を考えずにいられない。
海から吹く風に葉が揺れる。静かに流れる確かな時間と、この地にしっかりと根を張る木々たちの 美しい息吹が聴こえてくるような気がした。
大切なものは きっと
大切にするからこそ続いてゆく
大切にするからこそ続いてゆく
みなとの街の森づくり
もしお時間があれば
ご一緒に、いかがですか