2012年12月16日日曜日

こころのきずな

 12月も半ばにさしかかったある日、子供が通う保育園で、保護者や関係者、地域の方々との交流会の行事がありました。『きずなの日』というタイトルに惹かれて、参加させていただきました。

 たくさんの方々に出迎えられて最初は戸惑っていた様子の子供たちも、手造りのおもちゃコーナーやクリスマスの飾り付けを見るうちに、だんだんと笑顔に。

 子供一人ひとりに、実習生の方が一人ずつ付き添い、案内をしてくれました。私たちを担当してくれたのは、笑顔が可愛いやさしい女の子。絵本が大好きな娘に、上手に読み聞かせをしてくれました。
 卒業後の来春からは保育士さんとしてお仕事を始められるそう。頑張ってね、と言うと恥ずかしそうに、きらきらした瞳で『はい!』と返事が返ってきました。

 人形劇の時間もありました。たくさんの動物さん達が出てくるお話に、楽しい歌や踊りに、みな大喜び!手をたたいたり、指差したり、音楽に合わせて一緒にからだを揺らしたり。来てよかったな、嬉しそうにはしゃぐ娘を見ながらそう思いました。

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 今年のルミナリエのテーマは、光の絆。すっかり季節の風物詩となった冬のイベントだけれど、地元の人々にとってはお祭りではなく、復興への願いを込めたセレモニー。毎年灯される照明やキャンドルは、神戸の街の鎮魂の灯り、希望のひかりです。

 ここに来たばかりの頃、私はまだ学生で、ひとり暮らしをしていました。ふと立ち寄った『震災メモリアル館』と名づけられた場所で、被災された方々の手書きのメッセージを拝見する機会がありました

 特に目を奪われたのは、他の場所へ避難されていた方々のもの。今でも忘れられない、切実なメッセージ。
 『大好きな神戸へ帰りたい、帰りたい、帰りたい…』 生まれ育った故郷を想う気持ちが痛いほど伝わって来て、胸がいっぱいになったのを憶えています。
 震災後、数年経っていたにもかかわらず、街のあちらこちらに点在していた青いシートが架かったままの空き地。今はすっかり綺麗に整備されているけれど、こころの復興へめぐり着くには、あとどのくらいの歳月が必要なのだろう。
 朝5時46分で止まったままの時計。
 象さんが目印の北野のビルには、震災が起こった時刻がそのまま残されています。ルミナリエの点灯時間を待ち、大勢の観光客で賑わう街とは対照的に、夕闇にひっそりと佇み、静かに祈りを捧げているようでした。

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 人は、独りでは生きては行けない。 よく言われることですが、大人になった今 身に沁みてそれを感じます。 こころの絆。目には見えないけれど、だからこそ大切なもの。心身ともに健やかに暮らしてゆく為には、他者や自然との関わりが、何より必要になってくると思うのです。

 自分の中も同じ。「こころ」「からだ」はつながっていて、どちらかがバランスを崩すと、もう一方も不安定になってしまう…。

 自然の香りの持つ可能性を、その力を、私は信じたい。自分を癒やすことは、自分にとって大切な人をも癒やすこと。自然を感じ、こころとからだの声に耳を澄ませば、人とも自然とも、やさしく強くつながってゆける。

 香りを通じて、皆が大切なことに気が付いてゆく。つながってゆく。笑顔いっぱいになってゆく…
そんな願いを込めて、これからの活動を始めて行きたいと思っています。